人々が集まって生活をするためには、豊富な水の確保が必要になってきます。古代文明発祥の地がいずれも大河のある場所だったのは、自然な流れとも言えるでしょう。

現代のように上下水道が発達する以前には、人々が水を利用しやすくなる井戸は、街づくりにとても重要な役割を果たしていました。

今回はそんな街づくりに井戸が貢献していた一例として、中世ヨーロッパの「城と井戸」の関係についてご紹介いたします。

日本の城とヨーロッパの城の違いは降雨量?

日本にもいくつかの城が現存していますが、造形以外にヨーロッパの城との違いはどこにあるのでしょうか?

日本の城の場合、城の周りに堀を巡らした作りが定番です。しかし、ヨーロッパの城は山や丘の上に建てられているケースが多くみられます。

どちらも、外敵からの侵入を防ぐための工夫ですが、日本は堀によって城の周りを水で満たし侵入しにくくするのに対し、ヨーロッパは山や丘などの高低差を利用して侵入者対策を行う仕組みになっています。

ヨーロッパは日本に比べると降雨量が少ないため、城の周りに堀を巡らせることは現実的ではありません。
日本とヨーロッパ、それぞれの土地の自然環境や資源の有無によって、こうした違いが生まれたと考えられます。

中世ヨーロッパの城における井戸掘りの重要性

中世ヨーロッパで城を建てるときに、まず最初に行われる工事がありました。
それは、ズバリ「井戸掘り」でした。

城での暮らしは山や丘の上のため、ほかの王国から攻め入られてしまったときに、籠城して戦うケースが想定されます。
籠城中は城の中で飲料水を確保することが出来なければ、戦うことはおろか生命を維持することすら出来なくなってしまいます。

そのため、城を建てるときは最初に井戸を掘って、十分に水が確保できるかどうか確認した上で建設を始めていました。

よい井戸の確保は城の守護につながる!?


よい井戸を確保することは、城塞を築くことと同じくらい重要なものとみなされていました。

ニュルンベルク城の井戸の深さは50メートル、ヴェルニツ河畔のハールブルク城の井戸の深さは120メートルもあったといわれています。
また当時は、現代のような建設機械がなく、膨大な労力と時間がかかってしまったことでしょう。
しかし、井戸はそれほどの労力と時間をかけてでも確保する価値のあるものとみなされていた証でもあるのです。

中世ヨーロッパの城と井戸の関係についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
時や場所を超えても井戸が人々の暮らしを支えるための重要な役割を果たしていることに変わりはなく、これからも重要な役割を果たし続けてくれることでしょう。