井戸といえば、四角や円い形の井戸を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?実はそのほかにも、日本には六角形の形をした井戸があり、その珍しさから観光名所にもなっています。

そこで今回は、普段目にする四角いタイプや円形タイプの井戸とは一味違った「六角井戸」についてご紹介します。

六角井戸の由来は中国?

六角形の井戸は、中国の明の時代に日本へ伝えられたという説があります。
中国にある井戸は大半が六角形や八角形のため、そのような説が生まれたのかもしれません。

さらに、六角井戸があることで有名な長崎県平戸市は遣隋使や遣唐使の寄港地だった歴史があり、中国の明の時代には貿易を行なっていました。
そのため、中国の明の影響を受けて六角井戸が作られていたとしても不思議ではありません。

しかし、残念ながら六角井戸の由来について詳しい記録は残っていないため、本当に中国の明から伝えられたものなのかどうか定かではないようです。

日本各地にある「六角井戸」

日本各地にある「六角井戸」
日本各地にあるといわれている六角井戸の中でも、長崎県をはじめ京都府や奈良県で作られたものは観光地としても有名ですので、いくつかご紹介いたします。

長崎県平戸市の六角井戸

長崎県の平戸市に現在も残る六角井戸は、中国との交流があったことを示す貴重な遺構として県の文化財に指定されています。
また、平戸には井戸のほかにもオランダ商館やポルトガル船入港の地碑などがあり、古くから貿易で栄えた街であったことが分かります。

長崎県雲仙市の六角井戸

長崎県雲仙市にある六角井戸は、弘法大師が錫杖を使い湧水させて水不足を救ったとされており、伝説の井戸ともいわれています。また、かつてはこの井戸の水が人々の飲料水として利用されていたそうです。

京都府綴喜郡の六角井戸

京都府綴喜郡にある六角井戸は、聖武天皇の玉井頓宮にあったものという言い伝えがあり、「公(橘諸兄)の井戸」と呼ばれています。民家が立ち並ぶ一角に残っているとても貴重な史跡として知られており、井戸のそばには橘諸兄が聖武天皇に送った歌の石碑があります。

奈良県奈良市の六角井戸

平城宮の正面玄関とされていた奈良市の朱雀門付近では、正方形と六角形のフレームが組み合わされて作られた井戸跡が発見されています。井戸跡は上の部分が一辺およそ2.4mの正方形で、下の部分には六角形の井戸のフレームが7段も作られています。
この井戸が見つかったことによって、朱雀門前ではかつてさまざまな行事が行なわれ、なんらかの儀式に使用されていたのではないかといわれています。

このように、六角井戸はこれまでの日本の歴史や文化と濃密に関わっており、謎を紐解く資料としても重要な遺跡なのです。

まとめ

日本各地の「六角井戸」の由来や歴史についてご紹介しました。
井戸といえば四角いタイプや円形タイプのものを見かけることが多く、時代劇などにもよく登場しますが、「六角井戸」にも古い歴史があり謎を紐解く資料として大切に扱われています。

長崎県をはじめ、京都府や奈良県を訪れた際はぜひ今回ご紹介した「六角井戸」を観光してみてはいかがでしょうか。