私たち人間はさまざまな方法を使い、自分たちの住みやすい環境を作ってきました。
しかし、その結果として環境問題が発生したのも事実で、これからは自然と共存していくことが大切でしょう。

そんな中、自然と共存生活をしているお手本のような場所が岐阜県に存在します。「郡上八幡」と呼ばれる地域で、「水の郷」と言われています。

水の郷! 郡上八幡とは

郡上八幡は、岐阜県の飛騨高地の南部に位置している地域で、かつての「八幡町」のことを言い、町域には長良川が流れています。
大規模な合併により、八幡町という名は廃止されましたが「郡上八幡」として広く知られ、現在も岐阜県の出先機関や郡上市の市役所が置かれています。

郡上八幡は、江戸時代に造られた町並みが当時の姿に近い形で残っている旧城下町で、当時は政治や商業を中心とした八幡藩の城下町として栄えていました。
町中の至るところに水路が張り巡らされていますが、この水路は郡上八幡城下の防火を目的として造られたものです。

また、お寺が多く京都に似ているため「奥美濃の小京都」とも呼ばれていて、間口が狭く、奥に深いつくりの家が多いのが特徴です。
観光地の色が強くないため、自然な暮らしを見ることができます。

そんな郡上八幡ですが、1996年に国土庁から「水の郷百選」に選定されました。
では、なぜ郡上八幡が「水の郷」なのでしょうか?

郡上八幡は上手に水路を使っている

前述したように、市街地には多くの水路が張り巡らされており、景観として美しいのはもちろん、それだけでなくしっかり生活用水としても使われているのです。

その代表的なものが「水舟」です。
水舟とは、二層もしくは三層の階段状になっている水槽のことで、郡上八幡の町中で見かけることができ、個人の宅の敷地内に湧水や山水を引き込んでいます。

水槽は一番上を飲み水にし、中段は野菜や果物を洗ったり冷やしたりする場として利用、下段で食器洗いをし、ここで流れた食べ物の残りが下の池で飼育されている鯉や魚の餌となる構造になっています。
この水舟は400年以上前から存在し、水という資源を利用し、環境を汚さない工夫までしてあるのです。
また、観光用の水舟もいくつか設置されていて、そこでは水を飲むことができます。

その他にも、水路を用いた「カワド」と呼ばれる共同洗濯所があり、すすぎ洗いに多く使われています。
自然の水と共存し、大きな恩恵を受けていることが「水の郷」と言われる理由です。

郡上八幡の観光

郡上八幡は生活と水の魅力もさることながら、かつて城下町として栄えていたため、観光地としての魅力もあります。

宗祇水

宗祇水(そうぎすい)は、1985年に環境省が第1回「日本名水百選」に指定した湧き水で、そこから多くの人に知られるようになりました。
別名で白雲水(はくうんすい)と呼ばれています。
「宗祇」という室町時代の連歌師が由来であるとされていて、古今伝授を終えたあと京に帰る際にこの湧水を飲んで歌を詠んだと伝えられています。
今でも水が湧き出していて、郡上八幡の代表的なシンボルとして多くの人々に親しまれています。
商店街の一角にある祠の下から水が流れ、郡上八幡の町並みを通って、吉田川に注がれていきます。

古い歴史を感じる町並み

郡上八幡は城下町らしい軒の低い町並みになっており、職人町、鍛冶屋町は、国の重要伝統的建造物保存地区に、柳町は国の伝統的建造物保存地区に選定され、水路と町家が一体化した景観が見どころです。

いがわこみち

全長100メートルほどの小道で、傍を流れる用水路で鯉や鮎などの川魚が泳ぎます。
洗濯場が3ヵ所あり、すすぎものをしたりスイカを冷やしたりしながらコミュニケーションをとる社交の場となっています。

やなか水のこみち

両側に美術館があり、「美術館どおり」と呼ばれることもあります。
玉石が敷き詰められた小道で、玉石は吉田川や長良川で採取され、町の名前にちなんで「8万個」あるとされています。

吉田川

長良川に流れ出る川で、清流のシンボルです。
吉田川への飛び込みは郡上八幡で受け継がれた伝統で、夏になると架かる新橋から川へ飛び込む子供たちの姿を見ることができます。

水まんじゅう

町内の和菓子屋さんでは、郡上八幡の名水を利用した「水まんじゅう」を見ることができ、お土産にも人気です。

名水の街・郡上八幡を堪能しよう!

名水の街・郡上八幡を堪能しよう
郡上八幡は、自然の特性を活かしてエコな生活を実現させています。
私たちが暮らす地域でも、工夫次第では自然を活かした生活ができるかもしれませんね。
また、今回ご紹介した場所以外にも素晴らしい場所がたくさんあるので、機会があればぜひ名水の街を堪能してもらいたいと思います。