神社の敷地内、入り口すぐに設置されている「手水舎」は、参拝前に手や口を清めるための場所です。神社ではよく見かける設備ですが、「正しい使い方がわからない…」と悩む人も多いのではないでしょうか。

今回は、手水舎の起源や正しい作法、使い方など、気になる情報をまとめます。

そもそも手水舎とは?

水をたたえた大型の桶に柄杓が用意されていて、多くの参拝客でにぎわう手水舎。
漢字の読み方で悩みがちですが、「ちょうずしゃ」もしくは「ちょうずや」と読むのが一般的です。
もともとは「てみず」と読んでいたのが徐々に変化したと言われていますが、その形のまま「てみずしゃ」もしくは「てみずや」と読む寺社もあります。

神社はさまざまな神様がまつられている場所であり、参拝時には身を清めてけがれを落とす必要があります。
古い時代には、参拝前の身の清めは「禊(みそぎ)」と呼ばれ、風習化していました。
川の水の流れを利用し、身や心のけがれを落としていたのです。
手水の儀礼は神道にとって非常に重要な意味を持ちますが、現代社会において「参拝前に川で身を清める」というのは現実的ではありません。
そこで神社内でより手軽に手水を行えるよう、専用の建物として整備されたのが手水舎なのです。

手水とは、ただ単純に「手の汚れを落とすため」だけに行われるものではありません。
神様に失礼のない形で参拝するために、欠かせない儀礼の一つと言えるでしょう。
急いでいる時や手水舎周りが混雑していると、つい省略してしまいがちですが、その意味を理解してしっかりと身を清めてみて下さい。
「昔は川で行っていた内容」という起源を知っていれば、神社内の建物で手軽に行えることに、感謝の気持ちも湧いてきそうです。

手水舎を使うときの正しい作法

手水舎を使うときに、その作法で悩む人は決して少なくありません。
「周囲の人の様子をうかがいつつ、なんとなくドキドキしながら手早く終わらせている…」という人も多いのではないでしょうか。
これを機に、ぜひ正しい作法を身に付けてみて下さい。

1.まずは水で手を清める

手水舎に入ったら、まずは右手で柄杓を持ちます。
柄杓にくんだ水で、左手を清めましょう。使う水の量の目安は、柄杓の3分の1ほどです。
その後、柄杓を左手へと持ち替えて、右手を清めます。

2.次に口内を清めて、残った水で柄を清める

再度持ち替えて、左の手のひらに水を注ぎます。
注いだ水を口へと運び、そのまま口内を清めてください。口元を左手で隠しながら行うと、見た目も見苦しくなりません。
最後に柄杓を立てるようにして、残った水で柄を清めます。
元の位置に戻したら、手水は完了です。
右利き・左利きにかかわらず、こちらの手順で行いましょう。

手水舎での正しいマナーとポイント

柄杓に水をくむのは最初の1回のみなので、それぞれのステップで使用する水の量を調整して下さい。
また、口内を清める際に柄杓に直接口を付けるのはNGです。正しいマナーを身に付けて、手水舎を気持ちよく利用しましょう。

手水の目的は、参拝前に心身ともにしっかりと清めることです。
心のけがれも祓えるように、手水の前には気持ちを落ち着け、一礼をしてから取り組むことをおすすめします。
一連の流れを終えたあとも、軽く一礼してからその場を離れるようにしましょう。

手水舎が使えない場合はどうする?

神社の中には、「そもそも手水舎がない」「建物としては存在しているが、水が入っておらず使えない」というところもあります。
この場合には、どのようにけがれを落とせば良いのでしょうか。

最初から手水舎が使えないことがわかっている場合、ペットボトルに水を入れて持参するのがおすすめです。
参拝前に、先ほど紹介した手順で手水の儀を行いましょう。
ただし飲みかけの水は手水にふさわしくないと言われています。
まだ開封していないペットボトルや、手水のために持参した水を使うことをおすすめします。

水を用意できない場合は、ウェットティッシュで手を清めるだけでも効果があるとされています。
手水の目的である「心身を清めること」を意識して、行ってみて下さい。

手水舎に「龍」のデザインが多い理由

手水舎のデザインに注目してみると、水が出る部分に「龍」の彫り物が多いことに気が付くでしょう。
多く使われているのには意味があります。

日本では古くから、龍神を「水を司る神様」として神聖視してきました。
けがれを祓うための手水舎の水は、神社にとっても特別なもの。「龍神の口から流れた水」を使うことで、清めの効果を高めていると考えられます。
神社にとって大切なものだからこそ、手水舎の吐水口のデザインにこだわっているケースは多々見られます。
手水の儀を行う際には、ぜひ吐水口にも注目してみてはいかがでしょうか。繊細かつ厳めしい龍に、身も心も引き締まる心地になれそうです。

また手水舎の龍以外のデザインとしては、牛やきつね、かっぱやうさぎなどがあるようです。これらは、それぞれの神社とつながりが深いと考えられている生き物なのでしょう。
神社で祀っている神様や成り立ちとともに、注目してみるのもおすすめです。

神社に参拝する際には手水舎にも注目を

神社に参拝する際に、注目するポイントはさまざまです。参拝前の一つの儀礼として、ぜひ手水や手水舎にも注目してみてください。
手水の正しい作法を知っていれば、周囲を気にしてうろたえることもなくなります。身も心もすっきりと整えたのちに、気持ちよく参拝できるのではないでしょうか。