夏休みの時期は、お子さんが宿題の一つとして絵画に取り組んでいるご家庭も多いのではないでしょうか。絵画に熱中する様子は微笑ましい光景ですが、それも束の間、平和な時間のあとに待っているのは手間のかかる後片付けです。
特に絵具は筆やパレットについた汚れ、筆洗いに溜まった汚れをどう処理するかについて、「このまま排水口に流していいのかな?」と頭を悩ませたことがある方も少なくないでしょう。

そこで、今回は環境に配慮しながら絵具を適切に処理する方法についてご紹介します。

一般家庭でよく使われる絵具の種類と特徴

家庭ごみが素材や成分によって処分方法が異なるのと同様に、絵具の処理方法も種類によって変わります。したがって、絵具を一般家庭で処理する際はまず、絵具の種類と特徴についてよく把握しておくことが大切です。

水彩絵具

水彩絵具は学校の図画工作の授業で使われることも多く、数ある絵具の中でも使用経験と認知度は一番高いといえるでしょう。
水彩絵具は顔料とアカシア樹脂が主成分となっており、水に溶けやすいのが特徴です。さらに、乾いた後でも水を加えると再度溶けるため水分への耐久性は弱いですが、その分、服や肌についても落としやすく、扱いが簡単です。

油彩絵具(油絵具)

油彩絵具は顔料と乾性油を主成分とする絵具で、油を加えてのばします。発色が良く、立体感やグラデーションも作りやすいのが長所です。長期保存も可能なので制作者にとっては理想的な絵具ですが、乾くのが遅いという欠点があります。

アクリル絵具

アクリル絵具は顔料とアクリル樹脂を主成分とする絵具で、油彩絵具のようなはっきりとした発色と速乾性を備えている上、木やプラスチックなど様々な素材に使えるという長所があります。
容器から出して水でのばして使う点は水彩絵具と同じですが、一度乾いた後は水に溶けないため水分への耐久性が高く、一定期間作品を劣化させないで保存したい場合によく使われます。ただし、一度乾くと再度水で溶かすことはできません。

水彩絵具と油彩絵具の処理方法

絵具の種類によっては処理に手間がかかるものもありますが、水彩絵具と油彩絵具はコツさえつかめば比較的容易に処理できます。

水彩絵具の汚れは水で流してOK!

水彩絵具は水に溶けやすいので、使用した筆やパレット、筆洗いはすべて水で洗い流しても大丈夫です。陶器の洗面ボウルに汚れがついてしまった場合でも水を含ませたスポンジで軽くこすればすぐ落とせます。
ただし、水で溶いていない絵具が残ったパレットは、なるべく絵具を紙でふき取ってから洗うように心がけましょう。

油彩絵具は油での処理が基本

油彩絵具はそもそも水と馴染まない性質を持っているため、絵具がべったりついたまま水洗いするようなことは避けましょう。油彩絵具は何事にも油で処理するのが基本です。パレットに付いた絵具はパレットナイフでそぎ落とすか、油彩絵具専用のリムーバーで落とします。
さらに、筆は油彩絵具用の筆洗油で絵具を落とした後に石鹸をつけて洗い、水で流します。先に筆洗油でしっかり絵具を落としておけば水洗いの際の排水はそれほど気にする必要はなく、そのまま排水口に流してしまって構いません。

手間がかかる?! アクリル絵具の処理方法

アクリル絵具の処理方法
アクリル絵具は一度固まると水に溶けなくなるため、乾燥した後は排水口に流すことができません。そのためアクリル絵具は完全に絵具が乾いてしまう前に処理をすることがポイントです。

パレットの絵具はメラミンスポンジでこする

まず、乾いて固まってしまったパレットの絵具はメラミンスポンジでこすると落ちます。このとき、絵具が半乾きの状態であっても排水口に流さないようにしましょう。あとから下水管の中で固まって詰まってしまうことがあります。

筆は乾く前に水洗いする

筆は使用中でもこまめに水につけて洗い、絵具が乾かないようにしておくと後の処理が楽です。使用後も筆が完全に乾いてしまう前に洗うようにしましょう。水洗いする際は、なるべく汚れた水を排水口に流さないように筆洗いの中で洗うことをおススメします。

筆洗いの汚れは削り落とす

筆洗いの内外側面について固まってしまった絵具はヤスリなどで削り落とすとようにします。また、アクリル絵具で使用する筆洗いは最初から「ある程度は汚れるもの」として認識しておいた方が良いでしょう。

汚れた水は分離させる

バケツに溜まった汚れた水はそのまま排水口に流さず、平らな場所にしばらく置いておきます。すると水と絵具が分離するので、上澄みの汚れた水は排水口に流し、下層に溜まった絵具は紙でふき取るか、もしくは乾燥させた上で取り出して「燃えないごみ」として捨てましょう。
また、汚れた水を流すときは固まった絵具が流れていかないよう、網などを排水口に設置しておくと安心です。誤って固まった絵具が流れてしまうと下水管が詰まる原因になります。

不明な点は各団体・部署に問い合わせをしよう

家電や通信機器と同じように、絵具も製品改良が行われたり、従来製品とは成分や性質が異なる新商品も販売されています。そのため、上記で説明した処理方法が全ての製品に当てはまるわけではありません。もしも使用している絵具の処理の仕方で不明点があるときは、各地方自治体の下水道管理事務所や、製品メーカーのお客様相談室などに問い合わせてから処理するようにしましょう。

また、処理に手間のかかるアクリル絵具などには専用の処理剤が販売されていることがありますので、このようなアイテムを利用するのも良いですね。

まとめ

環境に配慮しながら絵具を適切に処理する方法についてご紹介しました。
絵具だけでなく、何かを排水口に流すときに少しでも疑問を感じたら一度立ち止まって念のため調べてみる習慣を身に付けたいものですね。大切な資源である水は、日々の行動を見直すことで守ることができます。