「手押し井戸ポンプ」というと、手でポンプを上下させながら水を出し、洗濯に使ったりスイカを冷やしたりなど、少し前の時代を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

平成となった今でも、この手動で井戸水を汲み上げる「手押し井戸ポンプ」は立派に現役で使われているどころか、日本はもちろん海外でも積極的に新規設置されようとする動きがあることをご存知でしょうか?

今回はそんな「手押し井戸ポンプ」をクローズアップしてご紹介いたします。

手押し井戸ポンプとは? 電動井戸ポンプとの違い

井戸ポンプが動く仕組みは、「手押しタイプ」と「電動タイプ」に分かれています。

手押し井戸ポンプは、手でハンドルを押し上げる動作によって、真空状態になっているポンプ内部に水を吸い上げ、ハンドルを押し下げる動作によって水を吐き出す仕組みになっています。
一方、電動ポンプは水道のように蛇口を開くだけで、電気の力で自動的に水を吸い上げ水を吐き出す仕組みとなっています。

日常生活で井戸水を使用する場合は電動ポンプが便利です。
しかし、人力でポンプを動かす手押しポンプは、電気を必要とせずに水を汲み上げられるので、停電時や災害時に生活用水・雑用用水を確保するために大きく役立ちます。

手押しポンプの歴史と現代の井戸の必要性

記録によると、手押しポンプは大正時代から製造され始めました。
一般家庭に普及させるために、昭和10数年ごろからシンプルで安価な手押しポンプが開発され、昭和30年代ごろまでには日本の一般家庭に広く普及され親しまれていました。

その後電動ポンプが普及していきましたが、水道の登場によって徐々に井戸そのものが一般家庭から姿を消していったのです。

しかし、近年では災害時のライフラインとして井戸の必要性が改めて見直され、主に公共施設や公園に井戸の設置を進める動きが見られるようになりました。井戸から水を汲み上げるために、電動ポンプだけではなく停電時を考慮して、人力で動かせる手押しポンプの採用も増えてきています。

世界で注目されている日本の井戸堀り技術と手押しポンプ


現在アフリカ・東南アジアの水不足に苦しんでいる地域で、水を簡単に確保できるよう、かつて日本で考案された井戸掘り技術が注目を集めています。

日本政府の援助、NGOをはじめとするボランティア団体の精力的な活動によって、井戸の掘削や手押しポンプの設置が行われています。
また、日本側が井戸堀り作業を行なうだけでなく、現地の人の手で井戸掘削を進められるよう、技術の伝承・人材育成も積極的に行われています。

こうした国々で新たに採掘された井戸には、電気を使わずに水を汲み上げることのできる手押しポンプが採用されています。
一昔前の懐かしい光景と思っていた手押し井戸ポンプは、今も多くの人に水の恵みを届ける大切なアイテムとなっています。

今後、日本のみならず世界のあらゆる国で、飲用・生活用としてや災害時の備えとしての「手押し井戸ポンプ」を目にする機会が増えるかもしれませんね。