お正月に行なわれる行事には、初詣や鏡開き、しめ飾りなど時代が移り変わっても受け継がれているものがたくさんあります。
普段はあまり意識しない方でも、お正月には初詣に行くという人は多いのではないでしょうか?

今回は、そんなお正月の風習の中でも、井戸にまつわる風習「若水(わかみず)迎え」をご紹介いたします。

若水(わかみず)迎えとは

お正月の風習の一つ、「若水(わかみず)迎え」とはどんな風習なのでしょうか?

「若水(わかみず)」とは、1月1日の早朝に井戸から汲み上げた最初の水のことです。
「初水(はつみず)」や「福水(ふくみず)」とも呼ばれ、「若水(わかみず)迎え」とは若水を汲みに行くことを指します。

かつては日本全国で行なわれていたそうですが、今でも一部の地域で行なわれているようです。
地域によって行ない方に違いがあり、井戸の水を汲むまでの道中はほかの人と会わないようにする地域や、ほかの人と言葉を交わしてはいけないとする地域、水を汲んでいるあいだにお祝いの言葉を唱えたりする地域などがあるそうです。

さらに、水を汲みに行く役割を担う人も、その家の家長が行く地域や、台所を仕切っている女性が行く地域など、こちらも地域によって違いが見られます。

若水は縁起がよいとされ、神さまへのお供えものにしたり、身を清めるために口をすすいだり、正月料理やお茶に用いることで一年の無事や無病息災を祈るなど、さまざまな利用のされ方があるそうです。

若水(わかみず)迎えの始まり

「若水(わかみず)迎え」の風習は、平安時代にお役所の主水司(もいとりのつかさ)が立春の日の早朝に、井戸から汲み上げた水を天皇に献上していたのが始まりといわれています。
主水司(もいとりのつかさ)とは、天皇や皇后、朝儀などに供するための飲み水、手水、食事、氷などを担当していた官司です。

そして、平安時代から伝わる「若水(わかみず)迎え」の習慣は、その後庶民の間でも徐々に広まっていきました。
庶民の間で広がった「若水(わかみず)迎え」は、家にお招きした歳神様のために水を神棚にお供えした後、その家の者たちが口をゆすいだり、お茶を入れて飲んだりしていました。

実は若水(わかみず)を神棚にお供えして、お招きした歳神様にお祈りすることを当時は「初詣」と呼んでいたといわれています。

若水(わかみず)にまつわる言い伝え


ここでは、若水(わかみず)にまつわるさまざまな言い伝えをご紹介いたします。

若水(わかみず)は、水を飲むことで1年の邪気を払うことができるだけでなく、若返ることができると考えられていました。
若水(わかみず)を飲むことで若返ることができると考えられるようになったのは、日本神話に登場する月の神が持っていた若返りの水「変若水(おちみず)」が結びついたためという説などがあります。
月は満ちたり欠けたりを繰り返すことから、かつての日本人は不死と再生の象徴としてとらえていたそうです。

若水(わかみず)にはこうした言い伝えが多くあることから、とても縁起のよい水とされています。

数多くあるお正月の風習の中でも、今回ご紹介した井戸にまつわる風習を初めて知ったという方も多いのではないでしょうか?
現代では、「若水(わかみず)迎え」の風習を継承している地域は少なくなってしまっているそうですが、最近では災害の対策などで井戸が重要視されていますので、こうした風習も注目される機会が増えてくるかもしれませんね。