地域によっては入浴や洗濯、そして飲用水として積極的に活用されている井戸水は、人が完全には管理できない地下天然資源です。
そのため、「いつものように井戸水を使おうとしたら濁っていた!」ということも珍しくはありません。
しかし、井戸水を生活用水として日常的に使っている方にとっては緊急事態の発生であり、原因を確認して早急に対処したいところでしょう。

そこで今回は、井戸水が急に濁る原因と対処の手順についてご紹介します。

井戸水が茶色や白色に! 考えられる原因とは?

今まで問題なく使えていた井戸水が濁ってしまい、「どうすればいいのだろう」と戸惑ってしまう方は多いものです。
井戸の水源は地下数十メートルの帯水層であり、どうにもこうにも状況を確認しに行くことはできませんが、考えられる原因はいくつかあります。

井戸水に含まれる鉄分

井戸水には少量の鉄分が含まれていますが、この鉄分が増えて外の空気に触れると酸化し、茶色く濁ることがあります。

雨水の混入

台風や大雨の影響で地表の汚れを含んだ雨水が井戸水に混入し、井戸水が濁ることがあります。

地震による砂の混入

地震の後に井戸水を出すと濁っていることがあります。
これは、揺れの影響を受けた井戸水に帯水層(地下水を含んでいる地層)の砂利や土砂、粘土質などが混じることによって起こるといわれています。

井戸内部の崩落

井戸内部が崩落していると、井戸水に崩落した部分からの土砂や砂利が混入して濁ることがあります。

生活排水や下水の混入

洗剤や細菌を含む生活排水、下水が何らかの原因で混入すると井戸水が汚染され、濁ることがあります。
この場合は、近辺で汚染された水が流れる水質事故が起きていることが多く、井戸水の濁りを確認する前に行政から注意喚起の連絡が届いているかもしれません。

井戸パイプの汚れ

井戸水を地上まで送ってくれる井戸パイプが汚れていると、井戸水自体に問題がなくても送られてくる途中で汚れが混入し、濁ってしまいます。
この場合は井戸パイプを掃除することで解決します。

濁り確認後の対処の手順

濁っている井戸水をコップにためてしばらく置いておくと、いつも通り透明になることがありますが、だからといって安全だという保証はありません。
井戸水の濁りを確認した後は決して自己判断で飲んだりせず、次の手順に従って専門機関で水質検査をしてもらいましょう。

濁り確認後は井戸水の使用を全面的に中止する

井戸水を生活用水として利用している方はどのような使い方であれ、一度中止してください。特に飲用水にしている場合はいつもの習慣でうっかり飲んでしまわないように注意しましょう。

各自治体の保健所に連絡する

自治体の保健所に、井戸水が濁った旨を連絡しましょう。
保健所から水質検査の詳細や検査が出るまでの対処方法などの案内があるので、これに従ってください。
このとき、保健所から採水の指示があった場合も、保健所指定の方法で行なってください。

専門機関による検査

水質検査は国の登録を受けた機関が担当します。早く井戸を使いたいからといって、市販の水質検査キットを使って調べることはおすすめできません。

検査結果に基づく保健所からの指導

検査結果に基づいて、保健所から具体的指導があった場合はそれに従うようにしましょう。
井戸水の利用中止勧告または命令を出された場合も同じです。

なお、水質検査にかかる費用は自治体によりばらつきがあるものの、1万円~2万円程度であることが多いようです。

家庭でできる井戸水の濁り対策

家庭でできる井戸水の濁り対策
濁りの原因が細菌や化学物質などによる汚染ではない場合、家庭でも次のような方法で濁り対策ができます。
ただし、水質検査で原因が確定していることが前提です。

井戸水ろ過浄水器を設置する

井戸水に含まれる鉄分や砂利などをろ過する井戸水ろ過浄水器を設置すれば、いつでもきれいな井戸水を使用できます。
一般家庭用であれば10万円程度で購入できるので、井戸水を台所や浴室で使用している場合は検討してみてはいかがでしょうか。

井戸や井戸ポンプ・パイプを洗浄する

井戸内部の壁や井戸ポンプ・パイプが汚れていると井戸水が濁る原因になるので、長年掃除をしていなかった場合は点検も兼ねて、井戸のメンテナンスができる業者に井戸全体の洗浄をお願いしてみましょう。

まとめ

井戸水が急に濁る原因と対処の手順についてご紹介しました。
井戸は地球の生命力を日常生活で感じられる、素晴らしい設備です。しかし、自然のものである以上、周囲の環境や季節、地殻変動などでガラッと水質が変わってしまう面があります。
つまり、井戸と人間との関係においては、例外がない限り「人間に主導権はない」といえるでしょう。
井戸に対して私たちができるのは、地球に優しい生活を送って地下資源をできる限り汚さないことと、井戸のメンテナンスや定期的な水質検査を怠らないことではないでしょうか。