街中のいたるところに設置されている自動販売機。
喉が渇いたときや、少し休憩したいとき、いつでも手軽に飲み物を購入できるのは自動販売機があるからです。

現代においては、当たり前のように誰でも利用できる設備ですが、過去にはどのような歴史をたどってきたのでしょうか。
今回は飲料用の自動販売機の歴史について紹介します。

自動販売機の始まりは紀元前・エジプトにまでさかのぼる

世界でもっとも古い自動販売機は、紀元前のエジプトにて使われていたものだと伝えられています。
紀元前215年ごろ、エジプトの神殿には「聖水自販機」が設置されていたのだそう。
古代エジプトについて研究していた科学者ヘロンの著書にて、その存在が紹介されています。

聖水自販機は、この原理を利用したものです。
コインを投入すると、その動きで聖水を注ぐためのふたが開き、時間の経過とともにまた閉じていきます。
利用者は、その限られた時間のみ聖水を手に入れることができたようです。

自動販売機がより活用されるようになったのは、1800年代のイギリスでのこと。
当時のイギリスでは産業革命が起き、人々のライフスタイルも大きく変わっていきました。
飲料用の自動販売機はもちろん、その他にもさまざまなアイテムを扱う製品が登場し、機能が大幅に向上したといわれています。
現在使われている自動販売機に使用されている基本的な技術も、この時期に確立されたもの。
自販機がたどってきた歴史に、驚く人も多いのではないでしょうか。

日本における自動販売機の歴史とは?

日本の自動販売機でもっとも古いのは、1904年頃に発明家・俵谷高七が製作した「自動郵便切手葉書売下機」だといわれています。
こちらは飲料ではなく、切手とはがきを販売するためのもの。
ポストとしての役割も担っていたそうです。

では日本国内において、現在のような飲料用自動販売機が使われるようになったのはいつなのでしょうか。
日本における飲料用自販機の本格普及を推し進めたのは、アメリカから進出してきたコカ・コーラ社です。

コカ・コーラは、1962年より日本国内における自動販売機生産を本格的にスタートしました。
同年には初の全自動コインクーラーおよび第1号コインクーラーを発表。
全国に合計880台を設置しました。

ちなみに当時のコカ・コーラ社の自動販売機は、レンタル方式で提供されていたのだそうです。
販売店は、レギュラールートで仕入れた飲料を自らの手で補充します。
コカ・コーラ社に対しては、月額レンタル料金を支払う仕組みでした。
本格的な自動販売機時代の幕開けではありますが、まだまだ現代の形とは異なる点も多かったと言えるでしょう。

1970年代から現代へ

1970年代に入ると、缶入り飲料用の自動販売機が登場。
これにより、炭酸・非炭酸を含めさまざまな種類の飲料を扱えるようになりました。
ベンダーによる販売形式がスタートしたのもこの時期で、より現代の形へと近付いていきます。

1975年に登場したのが、当時画期的なアイデアとして評価されたホット&コールドコンビネーション機です。
カップタイプの自動販売機で、ホット飲料とコールド飲料の両方を販売できる画期的な製品でした。
日本特有の自販機でしたが、「1台で幅広いニーズに応えられる自販機」として高く注目されるように。
短期間で日本中へと普及していきます。
1年を通じて安定的な売り上げを見込めるという意味でも、魅力が高い製品であったと言えるでしょう。

ちなみに、コカ・コーラ社が自動販売機でペットボトル飲料を販売し始めたのは1997年のこと。
今ではペットボトル自販機よりも缶自販機を見つけるほうが難しいほど普及していますが、その歴史は意外と新しいものです。
2002年にはキャッシュレス機能を搭載した自動販売機が全国的に設置されるようになりました。
「自動販売機=小銭を使う場所」といったイメージを大きく変える、きっかけとなった出来事です。

環境への配慮もさまざま

近年も、さまざまな形で進化を続けている自動販売機。
特に注目されているのが、環境問題に配慮するための工夫についてです。

コカ・コーラ社の場合、2005年には「ノンフロン(非HFC)型自動販売機」を開発し、全国展開をスタートしています。
2010年には自動販売機にソーラーパネルを搭載し、蓄積した電気で夜間電力を賄える製品を発表。
夜間照明の消費電力をゼロにすることで、電力の節約に努めています。
2013年には「ピークシフト自販機」を導入。
冷却用の電力を完全停止しても、最長16時間もの間、いつでも冷たい飲み物が提供できる画期的なシステムです。

ここまで見てきたとおり、自動販売機は社会の実情を反映し、今なお進化を遂げている最中だと言えるでしょう。
今後はどのような方面でどういった機能を搭載していくのか、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

自販機の今後にも注目を!

日本には非常に多くの自動販売機が設置されており、私たちにとっても身近な存在となっています。
コンビニやスーパーが近くにないとき、「飲料用の自動販売機があって助かった…」と感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。
自販機のこれまでの歴史を振り返ってみると、人々のニーズに合わせて進化を遂げてきた様子が伝わってきます。
今後もまだまだその流れは続いていくと思われますから、実際に利用しつつ、変化に注目してみてください。