日本の国土は海に囲まれ、水源の多い恵まれた土地です。
日本で暮らすわたしたちは、毎日飲み水の心配がなく蛇口をひねればいつでも安全な水道水が使えることを当たり前のように享受しています。

しかし、世界では上下水道設備が整っていない地域や、水不足で困っている地域など、水の整備が整っていないがために水不足が深刻な問題になっている地域が多く存在しています。

そういった地域での水不足解消方法のひとつとして、日本の井戸掘り技術が有効活用されていることをご存知でしょうか?

ひとりが1日に必要な水の量はどれくらい?

日本の井戸掘り技術についてご紹介する前に、ひとりが1日に必要とする水の量について確認しておきたいと思います。

飲み水として必要な水の量は、ひとりあたり最低でも1日2リットルが必要です。
さらに、飲み水以外にも調理をしたり手や顔を洗ったりと、生活する上で必要な水も含めると、必要な水の量はひとりにつき1日あたり20〜50リットルと言われています。

日本では、1日にひとりが使う水量は平均約245リットルにもなります。
つまり、最低限必要な水量の5倍以上の水を使っていることになります。
そのため、世界の中には水不足の地域が沢山あると言われてもあまりピンと来ないかもしれません。

しかし、世界に目を向けてみると、水不足が原因で年間約480万人、1日あたりおよそ5,000人もの方たちが亡くなっています。
生きるために必要な水の確保すら難しい地域では、水不足解消は緊急性の高い重大な課題となっています。

日本の井戸掘り技術が水不足の地域を救う

こうした世界の水不足を解消するために、日本政府の開発援助、NGOやボランティアによって上水道が完備していない地域住民の方たちとともに、各地で「井戸」が作られています。

日本に古くから存在している井戸掘り技術である「手堀り井戸」や「打ち抜き井戸」、人力で500m以上の掘削が可能な「上総掘り(かずさぼり)」という工法を現地の方に伝えています。
こうした手堀り井戸の作り方を伝え「技術者」を育成することで、現地住民たちだけで井戸を確保することが可能になります。

井戸を自分たちで掘ることが出来れば、必要に応じて新しい井戸を作ることが出来るため、井戸水という安定した水資源の確保に大いに役立つことでしょう。そして、日本の井戸掘り技術が現地の方たちから現地の方たちへ伝播していけば、多くの地域で水資源の確保が期待できるかもしれません。

広がる水不足と節水の必要性

世界の水不足事情は、あまり良い状態とは言えません。
農業や産業の発達によって農地や工場で水を大量に使うようになったことで、上水道が整備されていない地域に限らず、世界の様々な地域で水不足が起きています。

地球に蓄えられている水資源には限りがあるからこそ、日本をはじめ水を大量に使っている先進国の人々が積極的な節水を行うことで、水不足の地域の人へ水が行き届くようになり、命を落とす人を減らすことにつながるのではないでしょうか。

例えば、不要な布で汚れをぬぐってから食器を洗う、水を使用しないトイレやゴミ処理のためのコンポスト(バイオトイレ)を利用するなど、日常生活できる小さなアクションによる「水の使用量を減らす努力」が求められています。

水不足が叫ばれている地域では積極的に井戸堀りなどの水源確保を行ない、先進国では率先して節水をする。
こうした努力によって限られた水源を循環させ、多くの人が水の恩恵を受けられるようにしていくことが、自然と共存して生きて行く上で必要なことになっていくのかもしれませんね。