近年増加しているのが、病院で井戸を活用するケースです。
「病院」と「井戸」という2つのキーワードが、うまく結びつかない…と感じる方も多いかもしれません。
そこで今回は病院で井戸を活用するメリットや、こうした流れが生まれたきっかけ、実際の井戸の活用方法についてご紹介します。

なぜ今病院での井戸活用が広がっているの? 主なメリットは3つ

一般家庭においては、水道代節約のために井戸を掘るケースも少なくありません。井戸から供給される水は、庭の手入れや洗車に利用できるでしょう。
また、自宅内まで水道管を引き込んで、お風呂やトイレに使用される事例もあります。
井戸水の活用範囲が広がれば広がるほど、水道代を節約できるというメリットが生まれるはずです。

では一方で、病院がわざわざ井戸を掘るメリットはどこにあるのでしょうか。主な3つのメリットをご紹介します。

1.水道代を節約できる

病院では、日常的に大量の水が消費されています。
医療器具を洗浄したり、透析に使用したり、入院患者のケアをしたりと、水を必要とする場面は決して少なくありません。
水の消費量が多ければ多いほど、水道代の負担は当然上昇します。
一般家庭と同様に、病院においても「水道代節約のため」という理由で、井戸を掘る事例が増えてきているのです。

井戸水を利用すればするほど、水道代の負担は軽減できます。
病院の経営面を考える上でも、井戸導入のメリットは非常に大きいといえるでしょう。

2.災害時の備えになる

大規模災害が発生した際に、病院は病人やケガ人を受け入れる拠点として機能します。
とはいえ、ライフラインが寸断されれば、その機能を維持することは簡単ではありません。
特に「水」については、より厳重な備えが求められるでしょう。

災害時のため、大きな貯水タンクを設置し、常に水を用意している病院も少なくありません。
しかし、いざ災害が発生し、貯水タンクの水を使用する事態になったら、「いったいいつまで水を賄えるのか」と不安を感じてしまうでしょう。
電気やガスと比較して、水のライフラインには、「一度破損すると復旧までに時間がかかる」という特徴があります。
貯水タンクで数日分は賄えたとしても、その後の先行きは不透明に。
「だったらいっそのこと、井戸を掘って水を確保しよう」と考える病院関係者が増えてきています。

病院内に井戸があれば、災害時でも問題なく治療にあたれる可能性が高まるでしょう。
また、地域の防災拠点としても機能するはずです。

3.BCP策定に対応できる

厚生労働省では、各病院に対して、大規模災害発生時でもその影響を最小限にするため、BCPの策定を求めています。BCPとは、事業継続計画のこと。
何らかの問題が発生した場合でも、病院としての機能を速やかに回復し、治療できるようにするための計画を指します。

一般病院においては、BCP策定が「努力義務」とされています。
一方で、災害拠点病院の場合は「義務化」されていますから、さまざまな方面で被災からの復帰を検討する必要があるでしょう。

井戸を掘り、災害時でも十分な水を確保できる環境を整えることは、BCP策定にも役立つはずです。
井戸水であれば、大型貯水槽の設置場所に頭を悩ませる必要もありません。

病院に井戸が導入されるきっかけになった出来事は?

病院に井戸を導入しようとする近年の流れは、過去の震災をきっかけに生まれました。
特に阪神大震災や東日本大震災は、病院の災害対策を考える上で、非常に大きな節目になったと言えるでしょう。

近年では、「万が一の災害の際には、地域全体で人々の生活を守ろう」という流れも活発化しています。
井戸を所有する病院と自治体とが連携。
いざという場面では、病院が住民に対して地下水を供給する体制が敷かれている地域も、決して少なくありません。

気になる停電対策について

現代の井戸は、電動ポンプを使って地下水をくみ上げるスタイルが一般的です。災害が発生した際にも、水を使える可能性は高いでしょう。
一方で、停電していれば電動ポンプを動かせなくなります。

一般家庭であれば、「停電時にのみ手動でポンプを動かす」という仕組みで、十分に対応できるかもしれません。
しかし大量の水を消費する病院においては、必要な水のすべてを賄うことはできないでしょう。

停電時の対策として、自家発電システムを備えている病院は決して少なくありません。
多くの場合で「軽油」が燃料として使われていますが、それを使い切ってしまった場合にどう対処するのかが、重要課題の一つと言えます。
こうした状況に対応するため、近年注目されているのがLPガスです。
LPガスを使って井戸ポンプを動かす仕組みを搭載することで、より長時間、水をくみ上げられる環境を整備している病院も増えてきています。

病院の災害対策で井戸を掘るなら、停電対策についても、事前にしっかりと考慮しておく必要があるでしょう。
身近な病院で、どういった対策が取られているのか、注目してみるのもおすすめですよ。

今こそ井戸の魅力に再注目を

今こそ井戸の魅力に再注目を
普段私たちは、水道の蛇口をひねって、何気なく水を使用しています。
しかしひとたび大規模災害が発生すれば、そうした何気ない行動は不可能になってしまうでしょう。
どこでどう水を確保するのかが、非常に重要な問題となります。

万が一の災害に対応するため、多くの病院で導入が進められているのが「井戸」です。
いつ災害が発生するかわからない状況だからこそ、あらためてそのメリットに注目してみてはいかがでしょうか。