近年注目が高まる井戸の設置を検討する場合、まずは水道水との違いをしっかり理解しておくことも大切です。井戸水と水道水は同じ水でもさまざまな点で異なりますので、井戸の導入を考える上で大きなポイントにもなります。

そこで今回は、井戸水と水道水の違いや、それぞれのメリットと注意点についてご紹介いたします。

井戸水は自然にろ過された天然水!

井戸水の源泉は地下水です。自然にろ過された天然水で、水道水を供給する浄水場のように人の手でキレイにしているわけではありません。
地下水のメカニズムですが、まず雨が降って地面に落ちると地中に浸透します。そして地中に入った雨水は、数年、あるいは数万年かけて土や岩石によりろ過されるのです。雨水にはさまざまな雑菌や物質が含まれていますが、自然によりろ過されてキレイな水になります。

そして、この地下水を利用した井戸には複数の種類があり、一般的に多いのは浅井戸と深井戸と呼ばれるタイプのものになります。浅井戸は地表から約8m〜10m程度の深さの井戸であり、深井戸は約20m〜30m以上の深さがある井戸となります。
深井戸のほうは不純物が含まれていることも少なく、ミネラルウォーターとして飲料水にも使われている水です。一方で、浅井戸は地上の影響を受けやすいため、一般的には飲料水ではなく農業用や工業用、生活用水として使われています。

井戸水のメリットと注意点

井戸水を使用するメリット

井戸水は主に費用面、におい、災害時にも使用できるという点が大きなメリットです。
まず、井戸水は基本的にどれだけ使用しても無料で使えます。一方で水道を使う場合は、基本料金や使用量に応じた料金を支払わなければなりません。井戸で水を汲む際に電力を使用する場合は、その分の料金はかかりますが水自体は無料ですので、年間を通せばかなりの節約になります。
また、水道水のカルキ臭といった独特の臭いや味の問題とも無縁です。

さらに、地震などの災害が起こると水道水が止まってしまうことがありますが、井戸の場合はポンプさえ動けば、生活用水や飲料水などの必要な水を確保できるため安心です。

井戸水を使用する注意点

井戸の設置を検討する際には、メリットだけでなく注意点についてもしっかりとおさえておきましょう。
特に井戸水を飲料水として利用する場合は、水質や水量について考えておくのが大切です。井戸水は環境の影響を受けやすいため、定期的に水質検査が必要となります。

また、特に深井戸を掘るとなれば費用がかかり、水を汲むためのポンプといった設備も整えなければなりません。井戸を安定して使用するには定期的なメンテナンスも必要ですが、関連する費用も忘れずに考えておかなければならないのです。そして、水を汲むためのポンプは電力で作動するタイプのものも多いため、電気代のことも忘れないでおきましょう。ポンプの電気代は高額ではありませんが、それでも留意しておきたいポイントです。

水質が厳しく管理されている水道水

水質が厳しく管理されている水道水
水道水の源泉は、川や池、雨水をダムなどで貯めた水となりますが、このような自然な水はそのまま水道水として使っているわけではありません。
飲料水として水道水を飲んでも安全な状態とするには、浄水場でろ過して汚れを取り除き、キレイにしなければなりません。さらに、カルキ(塩素)での消毒も必要です。このように、日本では水道法第4条や水質基準に関する省令で水質が厳しく管理されています。

よく「カルキの臭いが気になる」、「水道水は美味しくない」という方もいらっしゃいますが、川や池、雨水を安全に飲める状態にするためには必要なことなのです。水をキレイに保つことで、世界でも珍しい「そのままでも飲める水道水」となります。

水道水のメリットと注意点

水道水を使用するメリット

日本の水道水は普及率や安全性が世界的に高く、簡単に使えるのが大きなメリットです。蛇口をひねれば飲める水が出てくるのは、水道法第4条や水質基準に関する省令などで厳しく管理されているからこそでしょう。また、水道水はミネラルウォーターよりも価格が安いのもメリットです。消毒されているため、保存性や安全性の面からも優れています。

一方で、消毒のためのカルキ臭が苦手だという方も少なくありませんが、蛇口での残留塩素は、1リットルあたり0.1ミリグラム以上保持すると水道法で決められています。この残留塩素によって水道水は安全に飲める水となるのです。

水道水を使用する注意点

水道水の安全性は非常に高い一方で、いくつか注意点があることは無視できません。水自体はキレイかもしれませんが、給水管などが問題となって蛇口から出てくる時点では安全性が低くなっている場合もあります。

例えば、給水管が古い場合は鉛が溶けて汚染されている恐れなどがあります。これは、1980年代の後半まで給水管に使っていた鉛が水に溶け出して起きる問題です。もちろん、多くの場所で取り替えられていますが、建物によってはまだそのままになっている場合もあるので油断できません。
また、法定耐用年数の40年を超過している水道管は、内部が錆びついている恐れがあります。

さらにマンションやビルでは、一旦貯水槽に水を貯める方式を取っているところがありますが、実はこれにはリスクもあるのです。貯水槽の管理はオーナーが行い点検をしなければなりませんが、点検のペースは厳密には決められていません。そのため、オーナーが貯水槽の管理を怠っていると、水質に問題が出る可能性もあります。

まとめ

井戸水と水道水の違いや、それぞれのメリットと注意点についてご紹介しました。
井戸水の安全性は、水道水に決して負けてはいません。むしろ条件次第では、井戸水のほうが安全性は高いともいえるのです。
また、費用についても井戸を掘ってしまえば、あとは電気代やメンテナンス代金がかかる程度ですので、長期的な視点で見ればお財布にも優しいのは大きなメリットです。

井戸の設置を検討する際は、今回ご紹介した井戸水と水道水の違いをぜひ参考にしてみてくださいね。