近年、気軽に飼育できるペットとして人気を集めているのが「熱帯魚」です。
水槽、酸素、温度、エサなど、適切な飼育環境を整えるためのポイントは多岐にわたり、その中でも忘れてはいけないのが「水」の管理についてです。

今回は、魚を飼育する上で知っておくべき水の基礎知識や注意点を解説します。

魚の飼育に水道水をそのまま使うのはNG!

私たち人間にとって、もっとも身近な「水」と言えば、水道水でしょう。蛇口をひねればすぐに使えるため、非常に便利です。
しかし、魚を飼育する際に、蛇口から出した水道水を使用するのは避けてください。魚にダメージを与えてしまう可能性があるためです。

魚の飼育に水道水が適していない理由はカルキにあります。カルキとは、水道水に含まれる消毒用の塩素のこと。
雑菌や細菌、病原菌などを除去するために必須の消毒成分であり、カルキが含まれているからこそ、私たちは常に安全な水を使えるのです。
もちろん水道水中に含まれるカルキの量には、法律で定められたルールがあり、私たち人間の体には害がないレベルに抑えられています。

しかし体の小さな魚にとっては、そのダメージは決して少なくありません。身体中に毒としてまわり、最終的に命を奪ってしまう可能性が高いのです。
また、水道水中に含まれるカルキにはバクテリアを殺してしまう作用もあります。
バクテリアは魚が暮らす水槽内の環境を整えるため、重要な役割を果たしています。カルキによりバクテリアが死滅してしまうと、魚にとっては非常に厳しい状況になってしまうでしょう。

水道水のカルキ抜きの方法は主に3つ

水道水に含まれるカルキによる魚への影響は、決して少なくありません。だからこそ、水槽用に使用する水についてはしっかりとカルキ抜きの作業を行ってください。
自宅でも手軽に実践できるカルキ抜きの方法は、以下の3つです。

沸騰させる

水道水に含まれるカルキは、いったん沸騰させれば抜くことができます。鍋ややかんに水を入れたら、10分程度しっかりと沸騰させましょう。お湯が冷めたら水槽に入れてOKです。
水の量が多いため作業としては大変ですが、特別なアイテムを使用しない分、手軽に実践できるでしょう。

そのまま置いておく

少し時間はかかりますが、水道水をバケツなどに汲み一定時間放置する方法もあります。
屋外のしっかりと太陽光が注ぐ場所であれば、6時間以上を目安に置いておきましょう。室内に放置する場合は、2~3日程度の時間が必要です。
そのため水換えをする際には、計画的に水を準備しておきましょう。

市販の中和剤を使う

多少コストはかかるものの、もっとも確実に塩素を除去できるのが市販の塩素中和剤を使った方法です。溜めた水道水の中に専用の固形物や液体を入れて、カルキ(塩素)を中和します。
お湯を沸かしたり放置したりする時間が必要ないため、いつでもすぐに飼育に適した水を用意できます。
また中和剤の中には、魚を元気にする成分を多く含んだものもあります。
飼育予定の魚に合わせて必要な成分が配合されている中和剤も多く見られますから、ぜひペットショップやアクアショップで探してみてください。

浄水器の水や井戸水は使える?

水道水に含まれるカルキが問題なら、浄水器の水や井戸水はどうだろう?と疑問を抱く方もいるでしょう。結論からお伝えすると、浄水器の水は熱帯魚の飼育に適していません。
一方で井戸水の場合は、最初の水質調査が重要なポイントとなります。

「水道水のカルキの臭いが気になる」という理由から、カルキ除去機能の付いた浄水器を使う方も増えてきています。
これなら魚の飼育にも適しているのでは?と思いがちですが、実は浄水器では、すべてのカルキを除去できるわけではないのです。一定量のカルキが残留し、魚にダメージを与えてしまう恐れがあります。

一方、自宅で井戸水が使える場合、カルキ問題はクリアできます。水道水とは違って、最初からカルキが含まれていないため、塩素が原因で魚がダメージを受ける可能性はないでしょう。
しかし、魚にダメージを与える要素は、カルキだけではありません。
pHや硬度など、井戸水の状態は場所によって大きく異なり、カルキは含まれていなくても、もともと魚の飼育に適していない可能性もあります。魚が好むのは、基本的にpH7(中性)の軟水です。
とはいえ、魚の種類によってはpH6(弱酸性)の水やpH8(弱アルカリ性)の水を好むものもいますから、自宅の井戸水の性質と飼育予定の魚の相性を見極めた上で判断すると良いでしょう。

いざ飼育スタート! 水換えの頻度は?

いざ飼育スタート! 水換えの頻度は?
自宅で魚の飼育がスタートしたら、定期的に水換えを行う必要があります。
水換えは、水槽内の環境と魚の健康を守るための定期メンテナンスの一つです。重労働ではありますが、1週間から2週間に1回程度の頻度で実施しましょう。

交換する水の量は、水槽内の3分の1程度です。一気に水を入れ換えると、急激な環境の変化に魚がダメージを受けてしまう可能性があります。「水換えを実施し過ぎるのも良くない」という点を事前に頭に入れておきましょう。市販の水質試験薬を使えば、水換えのタイミングを見極めやすくなるはずです。

水にこだわって熱帯魚飼育を楽しんでみて

犬猫がNGのマンションやアパートでも、比較的気軽に挑戦できるのが熱帯魚飼育です。
飼育環境を整える上で、忘れてはいけないのが「水」の安全性。魚の飼育に適した水について正しい知識を身に付け、快適な環境を準備しましょう。
特に飼育をスタートする段階では、水槽内の環境が非常に重要な意味を持ちます。水の特徴を知った上で、必要に応じてカルキ抜きも実践してみてください。