水道代の節約のため、また災害時の備えとして、「井戸」に興味を抱く方が増えてきています。井戸水を使うためには井戸を掘る必要がありますが、井戸掘りにも専門資格が存在することをご存知ですか?

今回は、井戸を掘るスペシャリストであることを証明するための資格「さく井技能士」について詳しくご紹介します。

「さく井技能士」資格とは?

さく井技能士資格は、国家資格の一つです。
各都道府県に設置されている職業開発能力協会が検定を行い、それに合格すれば資格を付与されます。

ひと言で「井戸掘り」と言っても、家庭用の井戸を掘るのと天然ガス井や温泉井を掘るのではわけが違います。
一般的な井戸掘りと言えば、「地面に対して垂直に井戸を掘る」もの。
しかし実際の工事現場では、周囲の地質の状況や環境に配慮して、最適なさく井工事を行う必要があるでしょう。
どのような現場でも、問題なく対応できるだけの知識と技術を身につけている職人こそが、さく井技能士というわけです。

ちなみに、井戸掘りの作業そのものは、さく井技能士以外でも行うことが可能です。
とはいえ、安心・安全に井戸掘り作業を進めていくためには、周辺への騒音の配慮や自治体への届け出など…さまざまな項目を考慮しなければならないでしょう。
ただ単純に「井戸を掘れる」というだけではなく、「井戸掘りに関する作業全てに関して適切な知識・技術を身につけていて、安心して任せられる」のがさく井技能士です。

さく井技能士になるためには?

では、さく井技能士になるためには、どうすれば良いのでしょうか? まずは、さく井技能士の資格の基本について学んでいきましょう。

さく井技能士の資格には、「パーカッション式さく井工事作業」と「ロータリー式さく井工事作業」の2つの種類があります。
さらに、それぞれに2級と1級の資格があります。
合格するためには、学科試験と実技試験の両方を突破しなければいけません。

学科試験では、井戸や施工方法、材料やポンプ、関係する法規など、さまざまな知識を総合的に求められます。
実技試験では、パーカッション式とロータリー式、それぞれのさく井工事作業を通じて合否が判断される仕組みです。
100点満点中、合格ラインは実技試験で60点以上、学科試験で65点以上。
どちらか一方のみに合格した場合、次回以降、不合格となった試験のみを受験できます。

さく井技能士の試験を受けるためには、2級の場合で原則2年、1級の場合で原則7年の実務経験が必要です。
ただし2級受験の場合、専門高校・短大・高専・高校専攻科・大学卒業といった一定の学歴があれば、実務経験は不要になります。
1級の場合も、2級合格後なら実務経験は2年に短縮されますし、学歴に応じた軽減制度が用意されています。
自身の条件に合わせて、どれだけの実務経験が必要なのか、確認してみてください。

さく井技能士試験の実施日や合格率は?

さく井技能士試験は、1年に2回実施されます。
前期試験は毎年3月に実施要項が公表され、4月上旬より受験申込がスタート。
実技試験と学科試験が、6月から9月にかけて行われます。
後期試験の場合は、9月上旬公示・10月上旬に申し込み、試験実施が12月から2月というスケジュールです。
ただし実際の日程は、年度や都道府県によって違いがあるもの。必ず、自分が受験する試験の詳細を確認した上で、学習をスタートしましょう。

さく井技能士の受験費用は、1級・2級ともに、実技試験が18,200円、学科試験が3,100円(2022年現在)です。
ただし、都道府県によって費用が一部異なっている可能性も。
また年齢に応じて、減額制度が用意されているケースもあるので、あらかじめ確認しておくと安心です。

気になる合格率についてですが、平成29年度後期さく井技能士合格者の割合は54.1%(一般社団法人 全国さく井協会)でした。
誰でも簡単に突破できる試験ではなく、しっかりとした事前準備を求められる試験と言えるでしょう。

さく井技能士の仕事とは?

さく井技能士の資格保有者が活躍しているのは、土木施工管理や土質調査、井戸堀りや石油掘削を生業とする各種企業です。
試験を受けるためには実務経験が必要とされるため、こうした企業に就職した後に、資格取得を目指すケースも目立ちます。

先ほどもお伝えしたとおり、さく井技能士の資格を保有していなくても、井戸掘りの仕事に従事することは可能です。
ただし、スキルアップやキャリアアップのためには、やはり技能士資格を保有していた方が有利になるでしょう。
全国的にも井戸の有用性が見直されている今だからこそ、積極的に取得を検討したい資格と言えます。

自宅に井戸を掘りたいと思ったら

自宅に井戸を掘りたいと思ったら
「自宅で井戸水を使いたい」という希望は、決して実現不可能なものではありません。
宅内の水道を全て井戸水に切り替えるのは大変でも、家庭内のごく一部に井戸水を取り入れれば、より豊かな生活につながるでしょう。
庭の手入れ用に使ったり、災害時に必要な水を確保できる環境を用意したりと、井戸を掘るメリットは多くあります。

自宅に井戸を掘りたいと思ったときには、井戸掘り作業を請け負ってくれる会社を探す必要があります。
こんなときには、ぜひさく井技能士の資格保有者が在籍しているかどうか、確認してみてください。井戸掘りに関して確かな知識と技術を有しているさく井技能士なら、作業全体を安心して任せられるでしょう。