水道による給水システムが整っている現在、井戸は昔ほど多くは見られなくなりました。特に都市部では「井戸を使ったことが一度もない」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、地域によっては積極的に井戸水を活用しているところがあり、水道水と上手く併用することで得られるメリットもあります。

そこで今回は、現在の井戸水の使用状況や水道水と併用するメリット、注意点についてご紹介します。

井戸は現在でも有用な水資源の一つ!

蛇口をひねればいつでもきれいなお水が使える水道は、私たちの生活になくてはならない生活基盤の一つです。
その証拠に2020年現在、日本で水道が引かれていない地域はほとんどありません。今から70年前にあたる1950年の日本の水道普及率は26.2%足らずでしたが、2018年には98.0%となり、現在の日常生活における飲料水やお風呂、洗濯などに使用する水のほとんどが水道水です。

しかし、水を得る手段は水道だけではありません。はるか昔、人類がきれいな水を求めて掘った「井戸」もいまだ有用な給水システムの一つなのです。

井戸ポンプの生産量と販売量から分かる井戸の現況

井戸がまだまだ活用されていることは2020年5月に発表された「2019年度経済産業省生産動態統計年報」の機械統計編を見るとわかります。
これによれば、家庭用電気井戸ポンプの生産台数は17万3,878台、販売数量は17万5,982台となっています。この数字をみれば、水道が普及している現代でも井戸が活用されているのがお分かりいただけることと思います。

しかし、一口に「井戸」といっても、昔のようなつるべ井戸や石組みの掘井戸ではありません。中には昔ながらの手押しポンプで汲みあげる井戸もありますが、昭和30年代に電動井戸ポンプが登場すると同時に水道も普及したことで、今では昔ほど見かけなくなりました。

したがって、現在の家庭用または業務用の井戸は電気井戸ポンプが一般的ですが、今でも手押しポンプを使用している地域や家庭もあり、最近では発展途上国へ輸出も行われています。

水道水と井戸水を併用するメリット

現代では水道が圧倒的に普及している状況でありながらも電気井戸ポンプが販売・購入され、井戸が活用されているのには理由があります。

それは、第一に水道水と井戸ポンプの併用による節約効果です。たとえば、広い範囲に水をまく農業や、製品の洗浄や冷却に大量の水を使う製造業の現場で井戸水を利用すれば、水道代の大きな節約になります。
さらに、水道水の代わりに水質の良い深井戸の水を飲料水にすれば、トリハロメタンや塩素などの不純物の摂取を減らすことにもつながります。

井戸は水道と比べて古いシステムではありますが、「年に1回は定期的に水質検査をしっかりと行う」、「消毒や熱処理をする」、「浄水器を使用する」といった対策をすれば安全性の高い水を確保できる上、水道水の節約が期待できる、とても便利でメリットの多い給水システムなのです。

井戸水を導入するときの注意点とは?

井戸水を導入するときの注意点とは?
井戸水と水道水を併用する際にはいくつか注意点があります。注意点をしっかり理解していないと自分だけではなく周囲にも迷惑をかけてしまう恐れがあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。

「クロスコネクション」はしない

水道水と井戸ポンプを使用するときは「クロスコネクション」をしないように注意しましょう。
クロスコネクションとは、水道水の給水管と井戸水など水道以外の管を直接連結する行為で、万が一汚染された井戸水が水道管へ逆流した場合は水道水まで汚染してしまう危険性があり、近隣一帯に迷惑がかかってしまいます。
また、逆に水道水が井戸に流れ込んでしまうと、状況によっては高額な水道料金がかかる可能性があります。このような理由から、クロスコネクションは水道法や水道法施行令、市の条例などで厳しく禁じられているのです。
ただし、クロスコネクションではなく、井戸と水道、それぞれ別の配管を設置するのであれば問題ありません。

井戸水でも下水使用料金がかかる

井戸水をトイレなどで使用する場合であっても、汚水を公共の下水道に流すことになるため手続きが必要になる点や、下水道使用料金がかかる点は理解しておきましょう。
たとえば、北九州市では排出する汚水量によって下水道使用料金が計算されます。また、水道と井戸水を併用している場合は、水道使用水量と井戸水の使用水量によって下水道使用料金が変動します。

まとめ

井戸水の使用状況や水道水と併用するメリット、注意点についてご紹介しました。
水道水と井戸水を併用するメリットはたくさんありますが、なかでも水道代を節約できる点は魅力的ですね。
また、井戸水は災害時に防災用水として活用できるため、万が一のときの対策を真剣に考えている場合であれば一考の価値があるでしょう。

このような点を踏まえた上で、ぜひ水道水と井戸水の併用を検討してみてはいかがでしょうか。