生活用水や防災用としてなど、万が一の備えで井戸の導入を検討している方は衛生管理を徹底して行うのが大切なポイントです。特に飲料水として使用する場合、水質に問題があると体調を崩してしまうリスクがあるからです。

そこで今回は、井戸水を安心して使用するためにも押さえておきたい衛生管理のポイントをご紹介します。

井戸水を安心して利用するために責任感を持って管理しよう

井戸水を安心して活用するには、井戸管理者が責任を持って安全性を確保しなければなりません。特に浅井戸は浅い場所の水ですから、地表の影響を受けやすいのです。
また、深井戸だからといって油断は禁物です。地中深くにある地下水だとしても、衛生管理を怠ることはオススメできません。

水質汚染の原因物質の中には、地中深くまで浸透するものもあるからです。このように井戸を安全に利用するために責任感を持って管理することは、衛生管理を行う上で極めて重要なポイントです。

衛生管理を徹底するには地下水が汚染される原因を知ることも大事

地下水が汚染されるのは、さまざまな要因が重なりあって起こります。あるひとつの原因を注意さえしていれば大丈夫、という単純なものではありません。衛生管理をしっかりと行うには、あらゆる原因に対して総合的に対応しなければならないのです。

地下水を汚染させる原因としては大きく分けて「公害系」や「農業系」、「自然由来」などが考えられます。衛生管理をする場合、井戸に影響を与えるこれらの要因がないかどうかをしっかりチェックしておきましょう。地下水を汚染する原因を理解しておけば、原因の特定をいち早く察知でき、安全に使用するためにどんな対策をすればいいのかの判断材料になるからです。

揮発性有機化合物(VOC)は有機溶剤などの適切な処理が重要

公害の場合、有機溶剤の「漏出」や「不適切な取り扱い」、「廃溶剤などいい加減に埋め立てる」、「不法投棄」などが原因としてあげられます。汚染物質の特性から、地下深くまで浸透して汚染するリスクがあります。また、液状やガスのまま土の中に存在し続ける可能性があるため、注意が必要です。
トルエン、ベンゼン、フロンなど揮発性有機化合物は自分の土地だからといって井戸の周辺に捨てるのは絶対に避けてください。
水質検査での基準値は、ジククロメタンが0.02mg/L以下、ベンゼンやテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンは0.01mg/L以下です。これらの数値以上が出ると汚染しているため対応が必要です。

重金属系は水に色や金気臭があれば注意

重金属系は、水に溶けにくく土壌に吸収されやすい特徴があり、移動しにくいものが多いのですが、中には溶けやすく移動しやすいものもあるため注意してください。
たとえば六価クロムなどの陰イオン形態のものは土壌に吸収されにくいタイプで、地下深くまで汚染してしまうリスクがあります。
汚染原因は「保管していたものや製造中の漏出」や「適切ではない埋め立て」など人為的な事柄に由来することが多いです。
ただし、中には自然由来のものもあります。水質検査では鉄及びその加工物だと0.3mg/L以下が基準値です。多く含まれていると、水が黄色~赤褐色や金気臭などがあるため注意しましょう。

硝酸・亜硝酸性窒素は家畜や農場に注意

硝酸・亜硝酸性窒素は「多すぎる施肥」や「家畜排泄物を適切に処理していない」、「生活排水が地下に浸透する」ことなどが原因です。土壌に吸着されにくく地下水へ移行しやすいため、土壌の中にある微生物によりアンモニア性窒素が酸化されることで生じます。
農地などで生じると汚染範囲が広範囲に及ぶリスクがあります。水質検査では、亜硝酸性窒素単体の場合0.04mg/L以下が基準値です。硝酸態窒素及び亜硝酸性窒素の合計だと、10mg/L以下が基準値となります。

病原性の微生物では大腸菌が出れば汚染と判断に

1970年頃まで、細菌や原虫やウイルスなどは、地下水を汚染する原因の代表格でした。時代の流れによって多少は少なくなりましたが、衛生管理を怠っている個人所有の浅井戸の場合だと注意しなければなりません。特に「未消毒」や「消毒装置の不備、故障」などが原因の例として多いです。また、下水や汚水、表流水が井戸水に混ざれば汚染が生じます。
水質検査の基準値では、一般細菌が1mL中集落数100以下です。それ以上だと汚染された可能性があると判断されます。さらに大腸菌は検出されないことが基準値です。検出されると汚染と判断されます。

井戸を安全に使用するために水質検査は必須

井戸を安全に使用するために水質検査は必須
井戸の衛生管理において水質検査は必須と考えておきましょう。井戸水はどんなにキレイに見えても、実際に含まれる物質の全てを人間の目だけで確認することはできません。

もちろん、「明らかに水が濁っている」、「異臭がする」、「味が変」と感じたら、汚染されている可能性があるため、使用するのを止めて行政機関に連絡をしてください。
また、鉄や化合物が多く含まれている場合は、水の色が黄色や赤褐色になる、金気臭が強くなるので注意が必要です。
濁っている場合は、土砂や排水や化合物質が含まれている可能性があります。

目に見える明らかな問題がなかったとしても、給水開始前の水質検査や、1年に1回は検査を行うなどして、水質の衛生管理に気を配ってください。
また、近隣で汚染事故が発生したときは、水質検査を実施したほうがよいでしょう。
水質検査は客観的なデータにより汚染しているかどうかを判断できます。安心して井戸水を使用するためにも、定期的に実施することが重要なポイントです。

井戸の周りを清潔にして、動物などが入らない対策を徹底しよう

衛生管理を考える上では、日頃から井戸の周囲にも意識を向けなければなりません。
たとえば、井戸のそばに工場や畜舎、農場、畑や汲み取り式トイレなどがある場合は、水質検査をしっかり行ってください。

工場や農場で使用している有機塩素化合物や窒素肥料の影響を受けている可能性もあります。溶剤などを取り扱っている方は、井戸付近関係なく不法投棄や不適切な埋め立てなどは絶対に避けましょう。

また、家畜の糞尿や汲み取り式トイレの便槽が壊れていれば、大腸菌のリスクが考えられます。動物や人が入らないよう、井戸の周囲にはカギをかけたり柵を設けたりし、清掃によって清潔な状態を保つようにしましょう。さらに、井戸ポンプに不備がないかどうかも定期的に確認をしてください。

まとめ

井戸水を安心して使用するために押さえておきたい衛生管理のポイントについてご紹介しました。飲料用に限らず、井戸水を安全に使用するためには、衛生管理は特に注意したいところです。衛生管理を怠ると体調を崩すなどの原因につながってしまいます。井戸水の恩恵をしっかりと享受するためにも、安全への取り組みは徹底しましょう。

井戸の周辺を清潔に保つことはもちろん、周囲に地下水を汚染するような原因がないか、井戸ポンプなどの機器に不備がないかなどをこまめにチェックし、さらに水質検査や消毒も定期的に行ってください。井戸水は衛生管理を徹底することで、初めて安心して利用できるのです。