井戸の撤去・解体の際には、工事が始まる前にお祓いとともに「息抜き」と呼ばれる作業が行われることがあります。
そこで今回は、主に撤去や解体を考えている方に向けて井戸の「息抜き」について分かりやすく解説します。

井戸の息抜きとは? お祓いとの違い

井戸の撤去・解体工事における「息抜き」とは、井戸の底から外にパイプを通す作業を意味します。具体的にはパイプを通して井戸に溜まった水やガスを外へ抜くために行う作業です。
井戸の底は長いあいだ水を通してきた場所であり、真上に新たに建物を建てると地盤が緩み沈下する恐れがあるので、息抜きによって水やガスを外に出し土地を乾燥させて地盤の改良につなげます。

また日本では井戸は古くから信仰の対象であったことから、水の神様や霊が宿っていると伝えられており、息抜きを行うことで神様が外に抜けられるようにするという意味も含まれていました。

息抜きは古くからの風習の一つで必ず行わなければならないと法律で定められているわけではありませんが、大切な役割がありますので井戸の撤去・解体の際には業者に依頼することをおすすめします。
そして、息抜きとは別に工事の際は「お祓い」を行うことが一般的であり、こちらは水の神様に感謝し、厄災などを取り除くための儀式です。
科学的根拠はなく、息抜きと同様に必ず行わなければならないわけではありませんが、神様に感謝もなく突然井戸を撤去してしまうことは失礼で罰当たりな行為とされています。安全に工事を終えて今後の繁栄を祈願する意味でもなるべく行うようにするとよいでしょう。

お祓いは神社の神主やお寺の僧侶に依頼して行いますが、業者が息抜きと併せて手配してくれる場合があるので確認してみましょう。

井戸が撤去・解体されるまでの基本的な流れ

ここでは、井戸を撤去・解体する際の主な流れを解説します。以下の5つの手順に分けられますので、あらかじめ確認しておきましょう。

1.お祓い

まずは作業を始める前にお祓いを行います。前述の通り神社の神主やお寺の僧侶に依頼し、井戸へ感謝の気持ちを伝えて工事の安全を祈願しましょう。
地域によってお祓いの形式やお供え物に決まりがある場合は、それに則って行ってください。事前に依頼する業者や神社などに確認してみるとよいでしょう。
なお服装は普段着で問題ありませんが、ラフすぎる格好は避けましょう。
「お祓い」については、井戸ポンプ情報局でも過去に取り上げていますので、ぜひそちらもご覧ください。(井戸新設・井戸撤去時にお祓いは必要?)

2.不用品の撤去・掃除

ここからは業者が行う作業です。井戸水がまだ溜まっている場合は水抜きを行い、内部を清掃します。水の神様に感謝の気持ちを込めて綺麗にし、井戸に残された枯れ木や廃材などのゴミも始末して、不要なものは片付けてもらいましょう。
掃除が不十分だと思わぬ事故を引き起こす原因にもつながり、水質や地盤に悪影響を及ぼす場合もありますので注意が必要です。

3.息抜き

掃除が終わったらいよいよ井戸の「息抜き」です。作業は塩化ビニール製のパイプや竹などを挿入して井戸の底から地面まで通します。
前述の通り、息抜きは井戸の水、湿気、ガスを外へ抜く役割がありますので、その後スムーズに工事を進めるために大切な作業です。業者が行いますので事前に依頼しておきましょう。

4.埋め戻し

息抜きの次はいよいよ井戸を埋め戻していきます。井戸の底は地下深い部分まで掘られており、コンクリートから作られた再生砂や再生砕石などを投入して慎重に埋め戻す必要があります。砂や砕石は良質なものを使用しないと水質汚染や地盤沈下の原因にもつながるため注意が必要です。
可能な限り井戸を掘る前の状態に戻すことが理想になりますので、自分では行わず必ず業者に依頼してください。

5.整地

埋め戻しを終えたら最後に地上部分にある井戸の枠を撤去し、整地を行います。井戸の枠が残った状態だと地盤沈下につながる恐れがあるので確実に撤去しておきましょう。
整地は井戸があった地面を周囲の土地と同じように平らにしますが、息抜きのために井戸の底から通していたパイプだけはそのままにしておくことが多いです。これは井戸があった位置を示すための目印として活用でき、新たに建物を建てる時に役立ちます。
なお息抜きで使用したパイプをいつ抜くかは明確に決まりがないため、不安があれば業者に確認しておきましょう。

井戸の撤去・解体は専門業者に依頼しよう

撤去・解体工事にかかる費用は、井戸の深さや大きさ、周囲の環境によっても異なりますが、基本的には息抜きなどを含めておよそ10万円前後の費用がかかります。
さらにお祓いにも数万円かかりますので、なかには工事は自分で行おうと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、井戸の掃除や息抜き、埋め戻し、整地などの作業を素人判断で行うのは危険です。
思わぬ事故につながる可能性があるだけでなく、地盤沈下を引き起こしたり、水質汚染を招いたりする恐れもありますので、安易に作業を自分で行おうとせずきちんとした専門業者に依頼しましょう。